フィリピンの前髪文化:一歳まで切らない風習は本当?

生後1年まで髪を切らない風習の実態

 

フィリピンでは、赤ちゃんの最初のヘアカットについて「生後1歳までは髪を切らない」という民間信仰(pamahiin)が根強く残っています。例えば現地の子育てサイト SmartParenting Philippines によれば、「一歳になる前に髪を切ると、髪が不健康になるか生えてこなくなる」と伝えられています 。またローカルの育児ブログでも「一歳になったら髪を切り、切った髪を辞書などの本にはさむと子供が賢くなる」という言い伝えが紹介されています 。こうした言い伝えから、一般に**「一歳になるまでは赤ちゃんの髪や前髪を切らない」**という意識が広まっています。実際、フィリピン人の親たちは次のような点を気にします:

 


生後1年以内に髪を切らない:髪の成長や健康に悪影響が出ると考えられている 。
初めてのカットは1歳で:1歳の誕生日頃に初めて髪を切り、その切った髪の毛を本にはさむと子供が賢くなるという俗信がある 。
担当者は頭のいい人:最初のヘアカットをするのは知的な人が良い、という言い伝えも見られます 。

 

 


これらはすべてフィリピンの民間伝承であり、科学的根拠はありません。しかし多くのフィリピン人が子育てで耳にしており、一種の生活習慣として受け継がれています 。逆に「生まれたての赤ん坊の髪を剃ると髪が太く濃くなる」という正反対の迷信も存在し、地域や家族によって信じる説はまちまちです 。

 

 

 

宗教・文化的背景

 

 

 

フィリピンはカトリックが大多数ですが、髪に関する教義は特にありません。むしろ上記のような髪のしきたりは**民間信仰(pamahiin)**に由来します 。キリスト教徒の家庭では「一歳までは切らない」という言い伝えを守る人も多い一方、国内にはイスラム教徒もおり、そちらでは生後7日目に赤ん坊の髪を剃るアキカ(Aqiqah)の儀式が行われます 。つまり、イスラム文化圏では初産後すぐ髪を短くする伝統があり、対照的です。さらに山岳先住民のイフガオ族などには、子供の髪を7歳前後まで伸ばし、一族の守り神に感謝する儀式(コロット)で切る慣習があります 。写真家の記録によれば、イフガオの男児は年に一度の祭りで盛大に初カットを行い、その後は髪が再び伸びるまで切らない伝統があるといいます 。このようにフィリピン国内でも地域や宗教によって髪のしきたりは大きく異なるため、「一歳まで切らない」が必ずしも全国共通のルールというわけではありません。

 

 

 

街角で見かけるフィリピン女性の髪型

 

 

 

一方、都市部や街中で見かけるフィリピン女性の多くは、黒髪でロングヘアをセンター分けにしているのが特徴的です。現地のセブ島紹介ブログでも「フィリピーナは黒髪ロングが多い」と指摘され、ヘアスタイルのバリエーションは3パターン程度に限られていると報じられています 。言い換えれば、前髪を作って可愛らしさを演出するよりも、髪そのものの艶や長さを重視する傾向があるようです。また日本人の感覚では気づきにくいかもしれませんが、海外(アジア諸国や欧米)では「前髪なし=顔を見せる」スタイルの女性はむしろ普通だと言われます。一例として、日本のQ&Aでは「アジア人でも欧米人でも、前髪のないスタイルが圧倒的に多い」「外国女性は前髪で隠す考えに固執せず額を見せる」などの意見が寄せられています 。フィリピン女性の場合も、顔立ちや髪質の違いから前髪を下ろさずセンター分けを好む人が多いと考えられます 。

 


これらの髪型傾向は、多くの場合「流行や美的感覚」が理由であり、子供時代の風習と直接は結びついていません。たとえば髪を伸ばしてセンターで分けるスタイルは、韓流や欧米トレンドを含む国際的なファッション影響や、湿度の高い気候で前髪の手入れが難しい事情などが背景にあると言われます。まとめると、フィリピンの女性に長髪センター分けが多いのは文化的・個人的な好みの産物であり、「生後1年の風習」の結果というわけではないようです 。

 

 

 

日本人との違い:ギャップと面白さ

 

 

 

日本の美容文化では「前髪あり」がとても人気ですが、フィリピンでは前髪を下ろすよりも額を見せるスタイルが目立ちます。日本人には「前髪があると幼く、ないと大人っぽく見える」「隠したいものをあえて見せない」といった感覚の違いがあるようです 。これはまさに文化の違いと言えるでしょう。旅行者や駐在妻にとっては、現地の女性が可愛さよりも自然さを重視している点が「へぇ」と思えるポイントかもしれません。また、日本では「ヘアスタイルは個性の一部」と考えますが、フィリピンでは伝統や簡便さを優先する場合もあります。異文化交流の面白さとして、こうした髪型のギャップを実際に観察してみると興味深いでしょう。

 

 

 

まとめ

 

 

 

調査の結果、フィリピンには**「生後1歳までは前髪を含め髪を切らない」**という言い伝えが実際にあります。これはキリスト教民間信仰に基づく習慣(pamahiin)であり、例えば「一歳前にカットすると髪が伸びない」「一歳で切った髪を本にはさむと子が賢くなる」といった説があります 。一方、街中で多く見かけるセンター分けのロングヘアは、これらの習慣とは別個の流行・美的感覚によるものです 。日本人から見ると前髪のあり・なしは大きな違いに感じられますが、フィリピンでは単に価値観や好みの差と考えられます。文化背景や民間信仰を知って、現地のヘアスタイルの違いを楽しんでみてください。